2015年8月31日

鉄欠乏性貧血と食事

小児における鉄欠乏の原因として、①成長、②鉄分の不足(鉄の摂取量不足、鉄の腸での吸収不足)、③長期にわたる出血の持続、があります。特に、成長は小児特有のものであり、成長には鉄の必要量がかなり大きいことを意味します。生まれてから1年で、身長が1.5倍、体重が3倍になります。そのために必要な鉄分はかなり多く、乳児の1日に必要な鉄分は成人と同程度です。貧血とは、血液中のヘモグロビンの量が少ない状態です。ヘモグロビンは体内に酸素を運ぶ働きをします。そのため、貧血になると全身が酸素不足になり、疲れやすくなったり、顔色が悪くなったりします。貧血の大部分は、ヘモグロビンの材料である「鉄分」が不足する「鉄欠乏症貧血」です。鉄欠乏症貧血は、鉄の摂取量が少ないか、鉄の需要が増えた時に起こります。摂取量が少ないとは、極端な偏食やダイエットで鉄の吸収がうまくいかない時です。需要が増えるのは、成長期や、妊娠、出産、授乳期です。月経過多や、潰瘍からの出血なども原因になります。


◎ 乳児期

鉄が欠乏する時期は乳児期から幼児期早期(6~24ヶ月)にあります。母乳中の鉄分は人工乳に比較すると少ないですが、腸からの吸収は母乳の方が多いです。しかし、生後6ヶ月を過ぎると母乳栄養のみでは鉄欠乏性貧血は防ぐことはできないので適切な離乳食を与えましょう。


◎ 幼児期

1.ヘム鉄を多く含む食品を食べましょう。
食品に含まれる鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。魚や肉に含まれる鉄分であるヘム鉄と、野菜や穀類に含まれる鉄分である非ヘム鉄です。ヘム鉄は、非ヘム鉄に比べて、腸での吸収が数倍良いと言われます。
  • ヘム鉄を含む食品:レバー、牛肉、鶏肉、赤身の魚、うなぎなど。
  • 非ヘム鉄を含む食品:ほうれん草、切干し大根、大豆、高野豆腐、わかめ、ひじき、あさり、しじみ、のりなど。
※非ヘム鉄は腸からの吸収のよくない鉄分ですが、動物性タンパク質と一緒に摂取すると吸収が良くなります。

2.ビタミンCを十分とりましょう。
ビタミンCは鉄分の吸収を良くします。ビタミンCをたくさん含む果物、野菜を食べましょう。


◎ 治療

鉄分を多く含む食事をとることが大切ですが、それだけでよくならない時は、鉄剤を飲んで治療します。軽い貧血であれば、1~2ヶ月ほど内服します。