一般的に夏かぜとは、夏の高温多湿の環境を好むエンテロウイルスとアデノウイルスによる感染症を指し、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱(プール熱)などが代表的な病気です。エンテロは「腸管」を、アデノは「のど」を意味する言葉で、ウイルスは腸やのどで増殖して、多彩な症状を呈します。小さいこどもは毎年のように夏かぜをひくことがありますが、これはエンテロウイルスやアデノウイルスには数十種類もの型があり、1つの型に感染してもその免疫が他の型には通用せず再び感染してしまうからです。
手足口病
原因はエンテロウイルス、コクサッキーウイルス。病名のとおり、手のひら・指の間/足・足の裏・ひざ/舌・口唇・口腔内粘膜に水疱性の発疹がみられます。乳幼児ではおしりにも同様な発疹がみられることがあります。しかし、必ず3カ所に発疹がみられるわけでありません。発疹は3~6日で消えます。発病初期に38℃程度の発熱を認めることがありますが、その後、38℃以上になることはあまりありません。口腔粘膜の水疱が潰瘍を形成すると痛みで哺乳や食欲が低下します。また、下痢をともなうことがあります。ほとんどは軽症で経過しますが、まれに髄膜炎、心筋炎の合併症があります。潜伏期間(感染してから発病までの期間)は2~7日です。
◎ ヘルパンギーナ
原因はエンテロウイルス、コクサッキーウイルス。突然の発熱で始まり、のどの奥が真っ赤になり、「軟口蓋」と呼ばれる、のどの奥の方に、直径1~2mmの水疱(周囲が赤い)ができます。水泡はその後、潰瘍となり痛みをともないます。発熱は39~40℃の高熱が2~3日続きます。口腔内の痛みで哺乳や食欲が低下して、脱水症をおこすことがあります。年長児では、背筋痛や頭痛、のどの痛み、食欲減退、嘔吐などがみられます。まれに髄膜炎、心筋炎を合併症することがあります。潜伏期間は2-4日です。
◎ 咽頭結膜熱(プール熱)
原因はアデノウイルス。6月頃から流行がはじまり、7月~8月にピークとなり、プールでの感染が多くみられることから、プール熱と呼ばれますが、プール以外の感染もあります。発熱、のどの痛み、結膜炎が特徴です。39℃前後の発熱、のどの痛み、頭痛、食欲低下、結膜充血、下痢などが3~5日くらい続きますが、すべての症状を呈するわけではありません。まれに、乳幼児のアデノウイルス感染症で呼吸障害の進行による重症化がみられることがあります。潜伏期間は5~7日間です。アデノウイルスは一般外来で迅速診断が可能です。
◎ 夏かぜに対する治療は?
ウイルスが原因のため抗生物質は無効です。特別な治療法はなく対症療法が中心で、数日~1週間で自然治癒します。口腔内病変に対しては、軟らかい食事を与え、水分摂取をこまめに行い、脱水症にならないように気をつけましょう。
◎ 感染経路は?
ウイルスの感染経路は咳や鼻水による飛沫感染と便からの排泄による経口感染です。感染力がもっとも強いのは急性期ですが、便からは長期(2~4週)にわたってウイルスを排泄します。
◎ 登園・登校は?
<手足口病、ヘルパンギーナ>
発熱や食欲低下などを認める場合は、登園・登校を控えてください。手足の発疹が残っていても、発熱がなく、全身状態がよければ、登園・登校は可能です。ウイルスは長期間にわたって排泄しますが、長期の欠席をする必要はなく、現実的でもありません。
<咽頭結膜熱>
アデノウイルスは感染力が強く、2日間の解熱を確認してから登園・登校をしてください。