◎ 症状
初期症状は発熱、咳、鼻汁でほぼ全例に見られます。発熱期間は4〜5日間続き、重症例では気管支炎、細気管支炎、肺炎などの合併症に伴う喘鳴(ゼイゼイ、ヒューヒュー音がする)などの呼吸困難を認めることがあります。症状が進行すると呼吸が早くなったり、陥没呼吸(みぞおち辺りがペコペコ凹む呼吸)がみられたり、喘鳴がさらにひどくなり、細気管支炎[1]や肺炎を合併して食欲・水分摂取が低下します。このような場合は入院治療が必要となります。潜伏期間は4〜6日間です。
[1]細気管支炎とは、細気管支(気管支が枝分かれして細くなった部位)にヒトメタニューモウイルスの感染がおこると、気道内腔が狭くなったり、気道表面の粘膜から分泌物が増加して、息をする時にゼイゼイ言ったり、痰をともなった咳の原因となります。
◎ 診断
流行の時期、年齢、症状からヒトメタニューモウイルス感染症が疑われます。すなわち、3月~6月頃に生後6ヶ月〜5歳くらいの子が発熱、鼻汁、咳をともなった呼吸困難があれば疑います。確定診断は綿棒で鼻腔粘液を採取して、この検体からヒトメタニューモウイルス抗原を検出する迅速診断検査キットがあり、約15分で診断ができます。
◎ 治療
◎ 治療
ヒトメタニューモウイルスに対する特別な治療薬はありません。症状に対する治療が中心で、咳、鼻汁など上気道症状に対しては風邪薬を投与します。喘鳴など喘息症状に対しては気管支拡張剤や抗アレルギー剤(ロイコトルエン拮抗薬:オノン、キプレス、シングレアなど)内服や吸入療法があります。発熱が長期化する場合には細菌性感染症の合併を考慮して抗生剤を併用することがあります。呼吸困難が悪化して哺乳力が低下している場合は、入院して点滴や酸素投与が必要になります。
◎ 感染予防
◎ 感染予防
ヒトメタニューモウイルスウイルスの感染経路としては気道からの飛沫感染と、鼻腔や口からの分泌物に汚染された手指や物品を介した接触感染が主です。ヒトメタニューモウイルスウイルスを家族内へ持ち込むのは、軽症の上気道炎症状をきたした幼児や学童が多く、乳児がいる家庭では厳重な手洗いが重要です。